閨中七友争論記(규중칠우쟁론기)

ソウルの大学路で伝統工芸工房・ダムル工房を経営し、韓国宮中飲食研究院の郷土料理講師でもある李賢淑先生が毎日の生活のなかで感じた徒然雑記を日本語で紹介します。(たまに…、いや最近は結構な頻度でゴーストライターのダムル工房日記になることも…苦笑)

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閨中七友争論記(규중칠우쟁론기)

李先生のキュバンチルウ
↑ 李先生所有の閨中七友

朝鮮王朝時代は男性の空間と女性の空間を厳格に分けて生活をしていました。そして女性の生活空間をアンバン、またはキュバン(閨房;규방)と呼びました。そして外の世界に出ることが厳しく制限されていた女性たちは、一日中閉鎖された屋敷の中で生活しなければなりませんでした。

朝鮮王朝時代キュバンチルウ
↑ 朝鮮王朝時代の閨中七友

そのため朝鮮王朝時代の女性たちは、生活空間が大きく制限されるという不満を自分たちの部屋を自分好みの小物で美しく飾ることで解消しようとしたのです。そして、創意工夫を凝らし、針と布を駆使して様々な生活工芸品を産み出しました。これが現在、閨房工芸と呼ばれる私たちが携わる工芸分野のいちジャンルとなっています。

キュバンチルウ入れ
↑ 李先生愛用の閨中七友入れ

また女性たちは閨房に集まり、意匠を凝らした小物を作りながら、様々な話を交わしていました。もちろん実用的な知識の伝達もしましたが、それだけではなく色々な物語を語りあったのです。

キュバンチルウ入れ表
↑ 閨中七友入れの外観

そうして生まれ、語り継がれた物語のひとつに「閨中七友争論記(규중칠우쟁론기)」(注1)というお話があります。この物語はもともと「閨中七友(규중칠우)」(注2)と言って、女性にとってなくてはならない針仕事のための7つの道具を、かけがえのない友達のように考えるという生活哲学から生まれました。すなわち、 針(바늘)、糸(실)、物差し(자)、ハサミ(가위)、アイロン(다리미)、指貫(골무)、インドゥ(인두)を擬人化して、彼女らが夜中、持ち主のお嬢さんが寝た後に色々話りはじめるのです。

キュバンチルウ4個
↑  閨中七友(左上から針、物差し、ハサミ、糸)
(幽談)但しハサミは飴をきる飴鋏なので、悪しからず…(苦笑)。数年前「韓国生活史」という授業のレポートとして、この史料を取り上げたのですが、その時発表用資料として作成したものです。でも当時どうしてもこの時代の布ハサミを探すことができなかったため、とりあえずそれっぽいハサミを探して載せたのですが、講師から「そのハサミ、用途が違うよ!」と即座に指摘されました…(苦笑)。そういえば、後で李先生に見せた時にも同じツッコミをされたような…。皆さんの厳しい指摘に日々鍛えられております…。

しかしこの物語は、読んでみるとそれぞれの道具の特性が実に上手く生かされており、また世間に対する痛烈な風刺が聞いていて、とても面白い物語になっています。この物語を通して針仕事に使用する道具は、単純な道具ではなく、女性を助けてくれる存在であり、心を安らかにしてくれ、想像力を与えてくれる、まさに「友人」のような存在なのだ…という気持ちが溢れているお話になっています。

キュバンチルウ3個
↑  閨中七友続き(左上から、インドゥ、指貫、アイロン)

私たち閨房工芸に関わる人間には必携の書と言われていますので、日本の皆さんも是非一度読んでみては如何でしょうか?

昔のアイロン
↑ 李先生所有の昔のアイロン

(幽の補足説明)
注1;「閨中七友争論記(규중칠우쟁론기)」とは、朝鮮王朝後期の作品と推測され、作者・年代未詳の韓国随筆です。様々な媒体を通して伝えられていますが、一番詳細な物語が残されているのは『忘老却愁記(망로각수기)』に掲載されているものです。登場人物は閨中七友の7名で、それぞれの名前が細腰閣氏(세요각시;針)、尺夫人(작부인;物差し)、交頭閣氏(교두각시;ハサミ)、熨娘子(울낭자;アイロン)、青紅黒白閣氏(청홍흑백각시;糸)、引火娘子(인화낭자;インドゥ)、敢闘老女(감투할미;指貫)となっています。

歴史学の史料としては、女性史分野における重要な一次史料として扱われており、当時の女性の心を探る重要な文献と言われています。しかし、そういった学問的な範囲を超えて、純粋な読み物としてもクスッと笑える風刺が効いており、お薦めです。

注2;もちろん男性にも「文房四友(문방사우)」と言って、男性にとってかけがいのない友とせねばならないものがあります。四友とは筆(붓)、紙(종이)、硯(벼루)、墨(먹)です。こういった思想から、当時の男性と女性に何が求められていたのかが分かると思います。


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また勉強になりました♪
またまた面白いお話をありがとうございます!
先生の閨中七友入れ、ステキですね〜v-238

「閨中七友争論記」を読みたいけど、韓国語できないし(^^;)
教保文庫のサイトで探しましたけど、本も見つかりませんでした。

でも、これを元に書かれた創作絵本が『아씨방 일곱 동무」ですよね?
http://www.yes24.com/24/goods/21622

これは日本語に訳されて『あかてぬぐいのおくさんと7にんのなかま』
という題で出ているので読みました。
http://www.pref.kochi.lg.jp/~syakai/shohgai/dokusyo/suisen/book19.html

韓国語版と日本語版の両方を持っていますけれど、韓国語版のほうが
大きくて絵が引き立っています。
[ 2012/03/09 02:47 ] [ 編集 ]
インドゥ
インドゥって
わかる人とわからない人といるんじゃないかなぁ・・
現代では持ってる人少ないのでは?
だから説明も難しいけどね~
[ 2012/03/09 10:10 ] [ 編集 ]
う~ん、確かに…
>shivaさんへ
→あ、確かに「閨中七友争論記」では原文物語は発行されていません。各種史料に収録されているのですが、一番有名なのが「忘老却愁記」なんです。

大学図書館とかには必ず入っている史料なのですが、教保文庫で普通に売っているか??というと、需要がないので売ってないでしょうねぇ~。

ちなみにソウル大学図書館にはありますけど…。

でも絵本になっているなんて、全然知りませんでした!今度本屋に行ったら絵本を見て、原文とどのくらい違うか見てみますね!
ついでに日本語にもなっているなんて!!

貴重な情報ありがとうございます。

>sono氏
確かに言われてみればそうかも…。インドゥは見てもらえば分かるかな?と思って説明を省いてしまいました…。

ま、大きくくくればアイロンの一種です。日本語では「ひのしごて」とか「のしごて」っていうそうですね。「タリミ(アイロンのこと)」が広い範囲のアイロン掛けをするなら、「インドゥ(ひのしごて)」は襟とか靴下とか細かいところの皺伸ばしに使います。

それからもう少し厳密に用途の別を言うのなら、タリミが洗濯後のアイロン掛けに使うとするなら、インドゥは着る直前なんかに使うことが多いです。

あとインドゥはチャコペンなんて、便利なものがなかった時代に布に折り線を付けたりする用途にも使ったそうですよぉ~。

こんなんで補足説明の補足、いかがでしょう??

[ 2012/03/09 19:45 ] [ 編集 ]
幽さんいつも楽しんで読ませて頂いています。昨夜のBS まち歩き観て知ってる所いっぱい出てて早くまた行きたくなりました。4月の下旬の連休前に行けたらなと思っています。先生に毎日興味深い
記事を書いていただきありがとうございますとお伝え下さい。勿論、Yッシご苦労さまありがとうございます。




[ 2012/03/09 21:22 ] [ 編集 ]
おひさしぶりですぅ~
4月の連休明けということは5月のGW以降ってことですか??

いいですねぇ~。ソウルが一番いい季節ですよ!!
緑が眩しくて、さかた氏の好きな山歩きもいいですよね!!

また社長と山歩きに行ってマッコリをたらふく飲まれるのかな??(笑)

お会いできるのを、楽しみに待ってます!
[ 2012/03/09 22:04 ] [ 編集 ]
どうでもいい突っ込みやけど
連休前だったら4月じゃないの?(笑)
それに、
4月はダメだって伝えたのになぁ・・・
そしてYってだれ?
[ 2012/03/09 22:10 ] [ 編集 ]
あ、ホントだ…
あ、ホントだ…。そっかぁ~。連休前か??
てっきり連休後のことかとうっかりだった…。

ま、4月が忙しいのは李先生だけで、社長はピョンチャンへ行きさえしなければ、それほど忙しくない筈なので構わないのかもよ??

ちなみにYって私のことだと思ったけど、違うの??
ほら「幽」の「Y」…。

あれ??違うのかなぁ~。勝手に私のことだと思ってたけど(笑)。
[ 2012/03/09 22:26 ] [ 編集 ]
あっはーHッシの間違いです。それに4月は確かに忙しいと聞いていましたが私の都合上って事なんですが…すみません。タイミングがよければーですね。


[ 2012/03/09 22:32 ] [ 編集 ]
みんなすれ違ってたわけね(苦笑)ま、ケンチャナヨ(^_-)-☆
[ 2012/03/09 22:51 ] [ 編集 ]
絵本は…
>ゴーストさん
「閨中七友争論記」は単独では出ていないんですね。
誰か訳してくれないかな〜?(笑)

絵本は「閨中七友争論記」を元にして、お話を創作
したものだそうだから、同じ話はないかも。
でも、読んでみてくださいね。
[ 2012/03/10 08:11 ] [ 編集 ]
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